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日々の呟きから子育てコラムまで。イラストレーターとファミリ―ライフエデュケータ-のコンビ「さえる」のブログです。家族支援学についても書いてます。
男の子育て本…
2017年01月29日 (日) | 編集 |
「男の子育て本」という出版ジャンルを知っていますか?
 育児休業取得者、専業主夫、シングルファーザーなど、実際に子育てを体験した男性達がその書き手で、すでに様々な本が世に出ています。ルーツは1975年に刊行された「主夫と生活」(マイク・マクレディ著、伊丹十三訳、学陽書房刊)。最近では、現役官僚が書いた「経産省山田課長補佐、ただ今育休中」(山田正人著、日本経済新聞社刊)が話題です。

 さて、これらの本は、育児に直面した男達の、おおむね共通した心理を私たちに教えてくれます。

 まず彼らは、たとえ自分から進んで育児に専念した人でさえ、一様にそのシンドさにとても驚き、
「世の専業主婦たちは、こんな思いで子育てをしていたのか!」
 と愕然とします。

 それでも気を持ち直し、追いかけてくる子どもの世話と雑用の嵐―それも食べこぼしの片付けやおしめの後始末などの汚れ仕事―に、正面から取り組み、しばらくしてそういう生活になんとか慣れてきたころ、今度は、社会からすっかり隔絶された自分に気づき、憂鬱な気分、いわゆる「育児の孤立感」に襲われるのです。

 このへんは、仕事をやめて育児に専念した女性の心理と驚くほどよく似ています。

 そしてその時期を乗り越えて、子育て生活に慣れるに従い、彼らは、妻が頻繁に遅く帰ることに文句を言ったり、子どもが妻より自分になついていることに悦に入ったり、保護者会に積極的に参加したり、などなど、限りなく「母化」していくのです(笑い)。

 一方、子育ての憂いなく、思う存分仕事に集中する妻のほうは、夫が持ちかける子育ての話を話半分に聞いていたり、無責任に子どもを甘やかして夫に文句を言われたり、「仕事が大変なのよ」と愚痴を言ったり、限りなく「父化」していきます(再び笑い)。

 面白いのは、最終的には、子育てを経験した男性達がみな、「子育ての楽しさ」にハマッてしまい、たとえ復職しても、元の仕事人間の自分に戻れなくなってしまうことです。

 たまには、こんな「男の子育て本」を読んで疑似体験してみるのも、楽しいかもしれませんよ。

(2006年 北海道浦幌町広報に連載したコラムの転載です)
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男だって子育て! その① 男たちよ!
2017年01月07日 (土) | 編集 |

その① 男たちよ! 

 はじめまして、ファミリーライフエデュケーターの林真未です。今月号から拙いコラムにお付き合いいただくことになりました。
 どうぞよろしくお願いします。

 さて、最近は「父親の育児参加」が花盛りです。カナダでも「父親は地球で一番素敵な仕事!」と銘打って、大々的なキャンペーンが行われています。日本国内、もちろん道内も盛り上がっているようで、私も先日、ある町で父親向けの講座を依頼されました。

 私の講座は一方通行の講義ではなく、参加者が自由におしゃべりするスタイルなので、その日も、興味深い意見が次々飛び交いました。
 ある父親が、
「男が働いて女が家事育児でなにが悪い。最近、父親に育児しろと世間がうるさすぎる。こっちは肩身が狭くなるばかりだ」
 といえば、他の父親が、
「いやあ、うちは共働きだから料理は全面的にぼくがやってます。お互い働いてると助け合うのがあたりまえという感じで…」
 と応戦。
「やってもやっても、奥さんに、協力が足りないようにいわれて…」
 と若い父親が悩みを相談すれば、他の人が、
「そうなんだよ。奥さんにもわかってほしいところはある」
 と共感するという具合。

 私は三人の子の母親で、しかもファミリーライフエデュケーターなんて触れ込みですから、結局最後に「これからの時代は男性も育児参加すべき」とまとめそうですが、実はそうでもありません。
「子育ては100の家庭があれば100通りあっていい。シングル家庭も含めて様々な家庭がある。両親がいる場合でも、父親が全く家事・育児をしないところもあれば、協力し合ってやっていくところ、あるいは専業主夫がいたっていい」
 というのが私の意見。ただし、その状態を母親(または家族等)が心から「幸せ」と感じていること、と言う条件がつきます。

 だって、
「女(同性愛の場合は男ですが)1人幸せにできなくて、なにが男よ(失敗した人は次回頑張れ)!」
 …私は、男性に対して夢とロマンを持っているのです。

(2006年 北海道浦幌町広報に連載したコラムの転載です)
マリー先生からのカード
2017年01月04日 (水) | 編集 |
カナダ家族支援職資格取得日記⑬

私の机の上には、「家族問題」担当講師のマリー先生がくれた直筆のメッセージカードが額に入れて飾ってあります。

 3年かけて日本で子育てしながら通信教育で課程を終えた後、卒業証書を貰いにカナダへ行ったとき、先生方が食事会をしてくれて、その時にマリー先生もいらして、このカードをくれました。

 先生、といっても、この資格課程はそれぞれの科目ごとにプロフェッショナルが講師を務めるので、マリー先生も大学教授ではなく、ソーシャルワーカー系の家族支援者。ゲンバの人です。

 私にはもったいないくらいの言葉が書いてあるんだけれど、へこたれそうになったとき、これを眺めると、もう一度元気が湧いてくる。

 資格を取得して、ささやかながら、いろいろなところで講座をしたりエッセイを書かせてもらったりして、それは「普通のお母さん」をしていた頃に比べて、なんとなく憧れていたカタチ、夢の実現に、はた目からは見えるでしょう。

 だけど、プロを名乗るということは、それだけクオリティを維持していかなければいけないことだし、充分なものが提供できているのか、絶えず不安が付きまといます。
 活躍している支援者の噂を聞くと頑張ろうと奮い立つけれど、奮い立った途端、批判を恐れて露出することにおびえたり、頑張ったつもりがうまく伝わらなかったり、など、現実には、なんだか苦しいことの方が多いです。

 なによりも、私が一番大切にしたかったはずの家族の時間は奪われたまま。
 自分の両親が仕事に忙しく、手作りとは無縁の子ども時代だったから、
 自分が家庭を持ったアカツキには、

 ハーブを育て野苺を摘んで、ペーストやジャムを作って、
 天然酵母でパンを焼いて、
 羊の毛を刈り綿花を育て、日がな一日糸をつむいで
 晴れた日には、森の陽だまりで、本を片手に子どもの遊ぶ姿を追って

 という暮らしがしたかったはずなんだ私は!!!!

 それがあたふたと炊事洗濯を電気の力を借りてすませて
 子どもがまとわりつくのも
 ああうるさい
 と適当にいなして
 PCの前で画面とにらめっこする日々。

 結果、
 手作りするはずの全てを、
 ファミリーライフエデュケーターのギャラで購入している悪循環。

 それなのに、

 もしも私ががんばらなかったら、
 また母たちはつまらない説教講座に付き合わされるんじゃないか。
 よいお母さん礼賛のエッセイに縛られるんじゃないか。

 私の知っていることを伝えたら、少しは支援者の役に立てるんじゃないか。

 なんておせっかい心が止まらないのです。

 そして必ず、それと同時に、
 そもそも私にそんな力なんてあるのだろうか。

 という不安が襲ってくる。
 
 そんなとき、マリー先生のカードを見やるのです。
 そしてその、過分の言葉を自分に言い聞かせるのです。


卒業おめでとう。
違う言語で、遠くの国から、課程を修了するなんて
なんてすごいことでしょう。

あなたは私の生徒の中で
一番興味深い優秀な生徒でした。

あなたは家族の問題を感じ取り、
そして彼らの長所を伸ばす、
天性の能力を持っています。

私は
あなたから日本の家族についてたくさんのことを学べたし、
自分があなたのお祝いに参加できたことを誇りに思います。

あなたが、未来においてもベストがつくせますように。
グッドラック。

(原文英語)
LGBT
2017年01月04日 (水) | 編集 |
カナダ家族支援職資格取得日記⑫ 追記

 この宿題が出たのは2001年のことで、その頃のカナダでは、同性カップルが養子の乳幼児を連れて、子育てひろばに遊びに来ていた。
 私が見たのはレズのカップルで、明らかにお父さんらしき女性とおかあさんらしき女性が仲良く子どもを遊ばせていて、スタッフも他の利用者も、特に気に留めることもなく。
 きくところによると、同性カップルが子どもがほしい時のためのワークショップなんていうのもあるんだそうで。

 日本ではやっと、渋谷区が先陣を切って同性カップルを認めたり、バイセクシャルなんて言葉がふつうに使われたりするようになたけど、でもまあ、いろいろ、まだまだだもんねえ。
 ふつうに、奇異な目で見られることなく、子育てしてるカップルって、いるのかなあ。

 ほんとに、英語の世界と日本語の世界に、いつも15年のタイムラグを感じる。

 もちろん、英語の世界にも根強く偏見とかいろいろあるのはあるんだろうけど、支援の充実ぶりはやっぱり羨ましい。

 
たとえばこんな宿題
2017年01月03日 (火) | 編集 |
カナダ家族支援職資格取得日記⑫

 前回、内容と言って英語を羅列しただけだったので、ここに少し日本語で内容を…と思ったのですが、これがどうも、日本語にすると漢字が多いから、なんか難しくて難しくて難しいイメージになってしまうのだよ。

 めげずに書いてみると。

 家族問題という講座は、文字通り、家族という形をあらゆる角度から眺めて、それが持つ機能や現実問題を明らかにしていく講座。それは、家族という言葉の定義づけだったり、家族形態の歴史の振り返りだったり、家族内のパワーバランスだったり、母や父の役目だったり、家族と仕事の関係だったり、家庭内暴力や児童虐待や貧困問題だったり。
 当時の講座の内容は以下の通り。

1.社会の中の家族
2.家族の発達の新しい見方
3.(関係性や社会における)”パワー”の問題について
4.文化的差異、多様性 そして偏見
5.女性の性的役割とされていることについて
6.家族の中の男性、父親としての男性
7.結婚と離婚
8.受胎・出産・子育て
9.仕事と家族
10.貧困
11.家族の中の暴力、虐待
12.介護者、世話する人としての家族
13.回復力と可能性

というわけで、考えうるあらゆるテーマを網羅して、しかもそれらをただ読んで学ぶだけでなく、脳みそをフルに使ってひとつひとつ「熟考」しなければならない。

 あー、やっぱり難しっぽくなっちゃう。
 ちがうんだよ。
 ちがうの。
 
 いろんな文献や最新理論、それに鋭い質問が毎回出てきて
 ほんとに学ぶのが面白いんだよ。

 日本語で、漢字で書くと、どうしてもとっつきにくくなっちゃうね。

 そうだ!

 それじゃあ、実際に出た宿題を一つ紹介しましょう。

 (宿題)映画分析
 「イン アンド アウト」(1997)または「ファミリー・再会の時」(1998)のどちらかを見て、それを元に8ページ以上のレポートを書きなさい。インストラクターの許可があれば、これ以外の映画でも構いません。

※これは性的偏見やレーシズム(人種差別)に関わる映画なので、他の映画でも同様のテーマのものを選ばなければ、許可は出ないと思います。レポートももちろん、そこのところに着目して、自分なりの意見をしっかりと書かなくてはいけません。

 日本語でいいから、やってみませんか?


自分の偏見に自覚的であることは、支援者にとって必須条件ですよー。


 ちなみに、上の各項目ごとにジャーナルっていう日記的レポートとかテキスト内の問題があって、さらに、宿題は1科目につき4つくらい出ます。資格を取るためには8科目必要なので、やらなきゃいけない宿題は大きいものだけで総計32こー。恐ろしや―。